粘菌
このタイトルを見て何かを期待した人は脳が溶けかけてます
それは先日、ホタルイカルアーを準備していた時の事。
「ないっ!?」
気付いてしまったのだ。
時価ウン万円分のレアメタル(タングステンシンカー)とフックをギチギチに詰め込んだケースが行方不明であることに。
慌てて家の中、いくつものポイントに散らばる釣具の保管場所をあたったのだが見つからない。
サぁーーーっ
と、血の気が引いていく音が聞こえたような気がした。
しかしなんとか平静を装いつつ記憶の糸を辿ってみる。
「最後にあのケースを持ち出したのは・・・」
正月、ポリちゃんとのタケノコ釣行だっ!!
・・・ということは、あるとすればポリちゃんの車の中・・・終わった
・・・ポリちゃんの車の中は腐海の森だ。
地表にある釣具が車内の毒を自らに取り込み浄化して朽ち果てる。
その上に新たな釣具が積み重なり、役割を引き継いだ後は埋もれ行く。
そうして釣具が幾重にも重なり層を織り成す森だ。
そこに私が手をかけた『人工物』である粘菌(シンカー)の苗床(シンカーケース)が迷い込んだとすれば・・・。
極悪な前後G、横Gによって苗床(シンカーケース)の外殻が破壊され、粘菌(シンカー)がばら撒かれる事になるだろう。
さすれば、人に手をかけられた哀れな粘菌を救う為、たちまち大海嘯が引き起こされよう。
森に暮らす全ての生き物(釣具)は怒りに包まれて膨張し溢れ出す。
そして大陸(車内)に残る僅かな地(座席)までをも次々と飲み込んでいく大きな波となって押し寄せる。
遂には最果ての地(助手席)までもが腐海(釣具)に没し、残されるのは運転席にそびえ立つ生分解性のポリちゃんのみ。
さらに暴走冷めやらぬ釣具と粘菌(シンカー)達は共食いを繰り返ししながら、時には反発し遠ざかり、時には呼びあって合流する。
大海嘯の大きなウネリは、悲しみ、憎しみ、喜び、希望、全てを飲み込み混じり合い、車内はひとつの森となる・・・。
そうなれば私が手をかけた粘菌達(シンカー達)はすでに形を変えて森の地層の一部となっているはず・・・
後は浄化の時を待つのみ・・・。
「あぁ、もうシンカー達には二度と会う事はできないんだ。」
腐海の森の奥深くに想いを馳せていた時・・・
「そういやあの時竿立て用にダイワのクーラー持って行ってたよな??」
ガサゴソっ、、、クーラーの蓋を開くと、シンカーケース・・・
・・・おったわ。。。
「アトガキ」
本作品はナウシカの原作本を読破したうえ、ポリちゃんとお知り合いになってから読むことをお勧めします。
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